5秒ごとにコンテナの中へ

しわは見た目だけの問題でしょうか？自動包装プロセスでは、しわ1つがワークフローを大きく混乱させることがあります。例えば、プラスチック製のトレイに置かれ、フィルムでパックされた食肉製品の場合、ピッキング工程では真空パッドはフィルムを吸着します。しかし、内容物の質量によってフィルムは変形し、しわが発生します。その結果、柔らかいシールリップ付きの真空パッドであっても凹凸に対して十分な追従ができず、また従来の真空発生器では真空を維持できなくなる場合があります。

物流と包装システムのスペシャリストであるBizerba社は、フィルム包装されたトレーのピッキングを確実に自動化する適切なソリューションを探していました。シュヴァーベン地方の町バリンゲンに本社を置く同社は、1866年に設立され、現在では、はかり、ラベリング、マーキングシステム、食品加工・検査システムを製造しています。世界120カ国で4,500人のスペシャリストが活躍しており、同社の年間売上高は約8億ユーロにも及びます。

スペインの顧客は、食肉包装の自動ピッキングのためのエンド・オブ・ライン・システムの開発をBizerbaに委任しました。以前は、社員が包装、計量、ラベル貼りをした後、トレイを輸送ボックスに積み上げていました。しかし、手作業では生産スピードに限界がありました。さらに、熟練した作業員が不足していたため、この顧客は人員を追加するという方法が選べませんでした。そのため、より高いピッキング率と24時間体制の稼働を実現するために自動化が必要だったのです。

Bizerba社はKilivations社と共に、2台の搬送ロボットによる新しいエンド・オブ・ライン・システム「ケースパッカー」を実現しました。ヴァイル・イム・シェーンブーフにあるKilivations社は、ロボットコントローラーに直接設置する、無駄のない効果的な自動化ソリューションのスペシャルリストです。同社は、個々の機器を食肉加工業者が使用している自動化セルに統合しました。このシステムの軸になるのはユニバーサルロボット社の2つの協働ロボットです。アーム先端の真空搬送システムについては、Bizerba社とKilivations社は、真空のエキスパートであるSchmalz社に依頼をしました。

協働ロボットのアームにそれぞれ取り付けられた同じデザインのグリッパーは、どちらもシュマルツの電気式真空ポンプを使用しています。コンパクトポンプ GCPiは、各ハンドに対して１台設置され、吸着ハンドに真空を供給します。GCPiは、コンパクトバルブ LQEiと組み合わせることで優れたシステムを形成し、空気圧式エジェクタを使用したシステムと同等の性能を発揮します。GCPiは、効率的なダブルヘッドダイヤフラムポンプを使用して必要な真空を発生させますが、シュマルツはこのポンプに省エネシステムを統合しました。これにより、ポンプの速度を要件に応じてコントローラから制御できます。プロセスパラメータは IO-Link インタフェース経由で直接転送できます。

それぞれの真空回路を制御するコンパクトバルブ LQEiは、グリッパーの中央に配置されています。必要なタイミングで真空スイッチを切り替え、真空システムの迅速な真空到達と大気開放を実現します。これにより、吸着・リリースの時間が大幅に短縮されます。バルブに内蔵されたセンサーが真空状態をモニタリングし、プロセスの真空圧を保証します。LQEiの自己保持タイプのバルブと逆止弁により、システムは停電時でも真空圧を維持します。

モジュール式グリッパーシステム PXTは、その容易さと拡張性の高さが特長のハンドシステムです。Bizerba 社とKilivations 社は、標準部品を組み合わせてワークに適切なハンドを作成しました。もし後から食品トレイの形状が変わっても、部品を組み替えて対応することができます。オリバー・ダイフェル氏は、「これは革新的なことであり、遮光壁で保護されたオープンなロボットセルにも適しています」と強調します。彼は、Bizerba社のグローバル顧客ソリューション＆インテグレーション・ビジネス・ディレクターです。これまで、食品加工業者はクローズド・セルに頼ってきました。クローズド・セルは通常、1種類のワークにのみ対応するよう設計されています。「クローズド・セルの場合、パックのサイズを変更するたびにシステムを苦労して変換する必要がありました」とダイフェル氏は振り返る。

ハンドに使用されている真空パッドのうちの6個はLQEiでコントロールされています。ベローズ真空パッド PSPFはFDA規格に準拠した材質を使用しているため、包装品に直接触れる工程でも使用することができます。フレキシブルで追従性のあるベローズ形状に加え、シールリップには特に柔らかな材質が使用されています。これにより、しわのあるフィルムでも柔軟に追従し搬送することができます。しわは単なる見た目の問題に過ぎなくなるのです。

コンパクトポンプ GCPiでは、グリッパーごとに2つの分離真空回路をIO-Link経由で制御することができます。「IO-Link通信により、真空到達時間やエアの漏れ量など、関連するあらゆるプロセスパラメータを評価することができます」とヤン・ウォルター氏は説明します。「これにより、システム内の吸着パッドの摩耗や漏れを検出することができます」この予知保全は、予期しないダウンタイムの発生防止に役立っています。

システムは全体的に電力で駆動しており、最適化された流路とケーブルの長さにより、圧縮エアを使用せず、ワークを迅速かつ確実に搬送することができています。これにより運転コストの削減を実現しました。グリッパーにLQEiを分散設置することで、シュマルツは極めて速い真空到達とワークリリースを実現します。これは、1分間に96ピックという要件を達成するために必要です。

包装され、ラベルが貼られたトレイは、ベルトコンベアによってシュマルツのハンドリングソリューションのピックアップポイントに運ばれます。2台のグリッパーがそれぞれ4つの食品包装をピックアップし、待機しているコンテナに5秒ごとに1層ずつ入れます。その後、ローラーコンベアがこれらのコンテナを発送エリアまで運びます。「時計仕掛けのように動いています」とウォルター氏は嬉しそうに語っています。

「シュマルツとKilivations 社との協力関係は一貫して良好で、スペインの顧客のために優れたシステムを設置することができました。顧客も非常に満足しています。」ユーザーは現在、高いスループットでシステムを稼動させ、人件費を節約し、自動化によってプロセスの信頼性を最大限に高めています。このケースパッカーは、2023年末からスペインで稼働しており、他の顧客もすでにこのソリューションに関心を示しています。「このシステムのスマートなコンセプトは、さらなるプロジェクトの基盤を形成するでしょう」とダイフェル氏は語っています。