真空パッドの設計
真空パッドの設計は、常に実際のアプリケーションに左右します。このため、適切な真空パッドを選定する前に、様々な物理的数値を計算し、決定する必要があります。後ほど、計算例に基づいて真空システムの設計についてより詳細に説明します。
吸込量
吸着力には、真空を発生させるための吸込量が重要です。必要な吸込量は、ワーク材質、素材によって異なります。 下表は、真空パッドの直径による吸込量の代表値(表面が滑らかで通気性がないワークの場合)です。
代表値( 表面が滑らかで通気性がないワークの場合)
真空パッドの直径 Ø | 吸着面積 A | 吸込量 Vͦ | |
---|---|---|---|
[cm2] | [m3/h] | [l/min] | |
~ 60 mm | 28 | 0.5 | 8.3 |
~ 120 mm | 113 | 1.0 | 16.6 |
~ 215 mm | 363 | 2.0 | 33.3 |
~ 450 mm | 1,540 | 4.0 | 66.6 |
注記
通気性があるワークについては、実際のワークを使用した吸着テストを推奨します。
摩擦係数
摩擦係数 "μ "は摩擦力と垂直力の関係を表します。真空パッドとワーク間の摩擦係数は、一般的に有効な値を指定することはできません。ワーク表面の状態(粗い/乾いている/湿っている/油っぽい)や、真空パッドの特性(形状/シールリップ/シーリングエッジ/材質/硬度)などが大きく影響するため、試行錯誤によって正しく決定する必要があります。
保持力の計算
保持力の計算は理論値程度にしかなりません。実際のアプリケーションでは、真空パッドの寸法やデザイン、ワークの表面状態や剛性(変形)など、多くの要素が決定的な役割を果たします。ドイツの事故防止規定(UVV)では、安全係数を1.5と規定しています。搬送中にワークをスイベルする場合、結果として生じる回転力に対処するため、2.5以上の安全係数を使用する必要があります。
真空パッドの保持力は以下になります:
F = Δp x A
F = 保持力(安全係数なし、純粋な静的力)
Δp = 周囲圧力とシステムの圧力差
A = 有効吸着面積 (真空下での吸着パッドの有効面積)
真空パッドの径
真空パッドの保持力はその有効径に依存します。真空システムが発生できる保持力には、ワークの状態や真空パッドの数も重要です。
必要な真空パッドの径は以下の式で求めることができます:
水平方向の搬送の場合
d = 1.12 × √ (m × S) ⁄ (PU × n)
垂直方向の搬送の場合
d = 1.12 × √ (m × S) ⁄ (PU× n x µ)
d = 真空パッドの直径 cm(ダブルシールリップの場合 ≒ 内径、ベローズ真空パッドの場合 = シールリップの内径)
m = ワーク質量 kg
PU= 真空圧 bar
n = 真空パッドの数
µ = 摩擦係数
S = 安全係数
水平方向の搬送の計算例
d=1.12 × √(50kgx2)÷(0.4barx4)
d= 8.85 cm
プラスチック板: m = 50 kg
真空圧:PU = -0.4 bar
真空パッドの数:n = 4
摩擦係数: μ = 0.5
安全係数:S = 2
直径95 mmの真空パッドQN 95を選択することが最適です。
垂直方向の搬送の計算例
d=1.12 × √(50kgx2)÷(0.4barx4x0.5)
d= 12.5 cm
プラスチック板: m = 50 kg
真空圧:PU = -0.4 bar
真空パッドの数:n = 4
摩擦係数: μ = 0.5
安全係数:S = 2
直径150 mmの真空パッドQN 150を選択することが最適です。